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No.14

      「チロ」は同志 ~強い生き方に教えられる~ ②
            黒木動物病院院長 黒木 克史さん

 

■黒木 克史さん  「チロ」は同志 ~強い生き方に教えられる~


■黒木 克史さん (44歳) 

 チロがうちの動物病院に運ばれてきたのは、1998年の春、高速道路のサービスエリアに横たわっていたのを救助されてきた。運ばれてきたときには既に歩けなくなっていて、上半身を起こすこともできなかった。レントゲン写真では腰椎が骨折していて、ずれていた。つまり脊椎神経が寸断された状態で、残念ながら下半身麻痺が残る状態だったのである。
 ピンクと黒色の首輪をつけていたので、捨てられたわけではないと思い、拾った方に飼い主を捜してもらう間、一時預かることにした。生後4か月くらいの子犬であったが、腰椎が麻痺したことで、動けないだけではなく、自分で排尿ができない。

 痛みのためなのか、人間不信なのか、近づくとウーと唸り、手を近づけると噛もうとする。私はこの子の安楽死も考えたが、飼い主がもしかして見つかるかもという思いもあり、看護師と共に世話を続けた。排尿は下腹部を圧迫して1日に4回させる。そうしないと膀胱がいっぱいになり尿が漏れ出てお尻のあたりが汚れるからである。
 この犬が馴れるには時間がかかった。先ず、食器を手で持ちながらあげるなど、犬との距離を少しずつ縮めていった。1か月ほどで、ようやく触っても怒らなくなった。病院内に放して運動させるときは、お尻が擦れて傷つかないように、尻尾の出口をはさみで開けた人の赤ちゃん用のおむつを付けて歩かせた。

 最初は弱々しかった前足も徐々に力強くなり、2,3歩歩くのがやっとだったのが、1か月後には病院内であれば下半身を引きずりながらも自由に移動できるようになった。
 3か月も経つと、胸筋、上腕筋が発達し、上半身がマッチョな犬になった。外へ連れ出そうと犬用の車いすも買ったのだが、つけると全く動かなくなり、断念。散歩は病院内と病院の前の花水木の木の根元のあたりだけにした。

 結局、飼い主は見つからず、彼女はチロと名付けられ、うちの動物病院の看板犬となったわけである。よく知っている飼い主を見つけると受付のほうに歩いていく。「かわいそうだねえ」と言われることも多い。野原を駆け回ることができないということでは確かにかわいそうな犬であるが、不幸という事ではない。

 そのチロも13歳になり白髪が増え、白内障になり、耳も遠くなった。

 動物病院を開業してもう17年経つが、開院したころに子犬、子猫を飼い始めた犬がだんだん病気や寿命で亡くなり、いなくなってきた。十数年間の飼い主とのお付き合いもいったんそこで終わる。「今までお世話になりました。」と言っていただけることもあるが、ありがたいことである。そういう言葉をかけていただくと、開院してからの獣医師としての私の人生を、その飼い主、動物とともに歩んできたように思える。

 チロも開院して間もないころからの犬なので、私と共に動物病院をやってきた同志のような気持ちもあり、年老いていくのを見るのはつらいことであるが、こればかりは私を含め例外なく訪れる仕方のないことである。おそらくは、あと1年か2年ほどでお別れかと思うと、チロをなでる手が止まらず、長い間なでていた【文:黒木 克史】

                                               完

●看護師さんに抱かれる介護犬たち ●黒木院長に抱かれる「チロ」 ●北國新聞で掲載された記事

 

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